【日記からサルベージ】  
* * タッチ * *




あたりさんの事が日々好きになります。
仕事なんてほったらかしにして君にメールを送りつけたい
時間をうまく操作出来ない私が悔しい。

というか、あたりさんの生活において
メール爆弾なんて迷惑きわまりないだろうけど。

それでも叫びたい。
タッチか。呼吸がとまってもう3時間だよ
あなた真剣な目をしているから
そこからなにも言えなくなるわけがないだろ!!!

叫ぶよ!!

萌!

あーーー。
一つ屋根の下の勉強部屋
以下ロンゲがタケクラで大工が武蔵。
タケクラが自覚のあるたらし和也で
武蔵が自覚があるけど自信のない達也

タケクラがヒルにお前を好きな所に連れてってやると口説き始めれば。
勉強部屋の外でそれを耳にした武蔵は静かに立ち去る。

武蔵が勉強できなくてうんうん言ってる時に
ヒルが教えてやろうとすると、拗ねる。
お前やタケクラみたいに頭良くないんでな

休日に朝から喫茶店でコーヒーを注文するタケクラ。
昼に起きたらいつまで起きてんだ、と
呆れたように目の前に大盛りナポリタンがどんと置かれる武蔵。

犬の散歩は武蔵がする。
たまにつきあうヒル。
そこにタケクラが来ると。
2人が並んで歩くのを見たく無くて早足になってしまう。

風呂に誰かが入っている。
タケクラはヒルだなって思ってちょっとにやっと笑って
近寄るけど、それを武蔵に目撃されて。
武蔵はちょっと意外そうな表情するから
俺だってこのぐらいはするさ。お前だってみたいだろ?
(優等生ぶって煙草すうタイプ。多分生徒会長だ!)

武蔵はむっとして、別に見たくねえよと。
強がるなよ、ってタケクラは窓を開けようとする。
けれど、それより先にがらりと窓が開く。
なかから、親父さんが顔を出す。

2人はちょうど影にいるから、
逆光になってて親父さんにはわからない。
また、閉じられる窓。
肩をすくめて苦笑いするタケクラ。
ちょっと笑う武蔵。

犬の相手をしてやってから、
また風呂の前を通る武蔵。

犬がうるさく吠える。
ばかだな、あれはヒルじゃないぞって言っても吠える。
そしたら。
がらりと窓が開く。
「うるせえぞ!!」
窓から現われた素肌。
向こうからは、見えない。
見えないはず。
犬が突然黙りこくって、おかしいと思われるから、
とっさに武蔵は犬の泣きまねをする。

オン

そうして。
不思議そうな表情のヒルが窓を閉じる。


しばらく、窓の外で立ち尽くす武蔵。

犬がオン、と鳴いて首をかしげる。
しゃがんで。もこもこのその身体を首を絞めるように、
いつものようにじゃれてやって。
真っ赤な顔を埋める。


風呂のなかで。
あの子も、また真っ赤な顔で。
小さく畜生と、呟く。

あいつの声を、聞き間違える訳が、ないんだ。



2005年06月20日(月)AM03:59-----



-----------------------------------


穏やかな筈の休日の朝。


ヒル魔が机の上に置きっぱなしだった日記。
勉強部屋のベットの中でだらだらしていたムサシの休日は
派手に蹴り開けられたドアの悲鳴で始まった。

「ここにあったか、畜生‥‥」
「あ‥‥?」

ねぼける顔でヒル魔を見下ろすとなにやら不機嫌極まりない顔。

「読んだだろ」
「あん?」
「俺の日記、読んだだろ!!!」
「読んでねえ!」
「‥‥どうだか、な」

寝起きのぼんやりする頭ではヒル魔が何を言っているのかよくわからない。
日記。そういや夕べからそこに1冊ノートがあった。
もちろん中身は見ちゃいねえ。
頭ごなしに疑われたから、少し腹が立っているだけだ。

「そんな所に置いとく方が悪いんだろうが」
「てっめ‥‥見たんだろ!」
「見てねえよ!!」

入って来たときと同じようにヒル魔はドアを荒々しく閉めて出ていった。
ドアを閉めても聞こえる足音に、憤慨しきったヒル魔の顔が目に見えるようでもあった。
見てねえ、って言ってるのによ
信じてもらえないのが腹立たしい。今度置いてあったら見てやろう、と。
悔しさの中でムサシはそう決心した。





それきりヒル魔と顔を合わせないまま休日は過ぎるかと思っていた。
部屋から出る気分にもなれず、雑誌をめくりながらごろごろと室内で転がっていつのまにかうたた寝をしていた。
体を起こすと室内は暗い。休みだってのにこんなもんか。
あくび混じりにのびをして、身動きひとつしない人影にぎょっとする。
窓から入り込む弱い光に浮かび上がるヒル魔のシルエット。
そんなとこで何してんだ。
言葉も出せずにムサシはぼんやりヒル魔を見上げた。

「先週もゴロ寝してたの覚えてっか」

らしくないほど小さな声でヒル魔がムサシに語りかける。

「すげえアホみてえな顔でよ。鼻つまんでも起きねえぐらいぐーすか寝てんの」

ヒル魔の意図が掴みきれず、ムサシは大人しく聞き役に回る。

「気づいてなかったんだろ?俺が、  してるってよ」

小さな小さな囁く単語は、それでもかろうじてムサシの耳に届いて消えた。
耳に届いた言葉の意味に、ムサシは驚きを隠せない。

「なに、言って‥‥」
「唇、湿ってんだろ」

慌ててそこに指を伸ばした。荒れた指先では細かい感触がわからない。
濡れている、かもしれない。ヒル魔がいつも使っているリップの匂いが残っている気がした。

「‥‥‥‥マジで、か?」

ヒル魔の両目がこっちを見ている。ムサシの反応を見逃さないような、静かな視線が今は痛い。
返事を何かするべきなんだろうか。ここで何を言えばいいんだろうか。
悩む中で自然に指が唇をなぞる。ヒル魔がここに、触れたと思うとそれだけで温度が上がるようだ。


「よし!」


突然ヒル魔が立ち上がる。胸の前で両の掌をたたき合わせる。間に挟まれた薄いノート。

「読んでねえな!」
「え‥‥」
「読んでねえ、読んでねぇ!」
「なっ‥‥‥お前、まさか‥‥」

ヒル魔の指先が壁のスイッチを押す。反対の手がポケットから何かを引き出しムサシに放る。

「てめーの唇、がっさがさだな」

反射的に受け取ったのはヒル魔が使っているリップ。

「だましたのか!」
「試したんだよ。よーし、読んでねえ!」

ヒル魔は上機嫌でその言葉を繰り返した。
見事にはめてやったと喜ぶ顔が得意そうに見下ろして来る。

「てめっ、ヒル魔!!」
「なんだよ」

やられた、とも思う。ヒル魔らしい見事な手口だ。
見事に気持ちを手玉に取られた。
何だよそれ。何だってんだよ。わかっててお前そういう態度かよ!
やり返したいと思うもののヒル魔をはめられるほどのネタをムサシは何も持っていない。

「てめっ‥‥」
「どうした?」
「ほ、本気にするぞ!」

ヒル魔の呼吸が一瞬止まった。
ほんの一瞬。まばたきのようなわずかな時間。
虚を突かれたような顔になって、隠すように後ろを向く。

「‥‥‥勝手に、しろ。糞じじぃ」

ドアを開けてヒル魔が出ていく。追いかける言葉をムサシは何も持っていない。





多分俺は、随分とマジな顔をしてたんだろう。
本音をそのまま言っちまった。
いたたまれないような情けないような。ヒル魔の手の中で転がされるような。


何も、言えなくなるような。






穏やかに収まらない休日の夜。







胸がぎゅってつまるぐらい、思い出すだけで青春のお話。