PM2*Fireworks  シーヤミナトさまへ】 
* * お布団の中でいちゃつく二人 * *



荒い息を落ち着かせるために大きく呼吸をくり返し、
コトが終わった武蔵はいつもの様に眠気に身をまかせた。
心地よいけだるさが体を包む。とろとろとしたその心地よさに浸りながら、
武蔵はヒル魔の体を抱き寄せた。

「暑苦しぃんだ、てめぇ……。」

情事の後独特の掠れた声が不満を漏らす。
暖房を切って時間がたった室内の空気が顔にひやりと冷たい。
文句を言いつつもヒル魔は布団の中から逃げ出さないのはそのせいだろう。
良い季節になったと思う。
布団の中に潜り込むヒル魔が外に出ている部分はかろうじて頬から上のみ。
さっきまであれ程汗をかいていたその顔は少し疲れを残しただけで、
目尻の赤さ以外はいつもと特に変わらない。
ついさっきまで顔を赤らめ、組み伏せた下で声を上げていたとは思えない程に。

武蔵の両手はヒル魔の下肢を散々いじり、お互いの体液に汚れている。
軽くぬぐった程度の状態で、ヒル魔の顔に手を伸ばせば何を言われるか分かった物では無い。
こちらに向けられた頬の温度がどれだけ下がったのかを知りたくて、
武蔵は無造作にヒル魔の頬へと顔を寄せた。
そろそろ鬚も目立ち始めただろうな顎を、自分とは全く違う質感の頬に押し付ける。

「重い……」

逃げる体を両腕で抱えて、尚も頬をすり寄せた。
逃がさないようにヒル魔の薄い肩に体重をのせ、触れた肌の冷たさを楽しむ。

「なんでてめぇはそう、暑苦しいんだ……」

形の良いヒル魔の鼻梁に武蔵は唇を寄せた。
すっかり冷えてしまっているそこは口の中で冷たさを主張する。

「口ん中、熱くて気持ち悪いんだよ」

コトが終わればすぐに熱を失うヒル魔の体は、暑苦しいからという理由でいつも接触を拒む。
けれど、ヒル魔の体内の方が。武蔵を受け止める、双丘の奥が。
絡める舌が、歯列の奥が。どれほど熱いのかをきっと知らない。

言えば蹴られるだろうコトを察知して、武蔵は黙って冷えてしまったヒル魔の肌をあたためた。
汗ばんでどこもかしこもがべたつくために、気持ち悪いのは事実だろう。
何とか距離を置こうともがくヒル魔の抵抗で肌と布団の間を冷えた空気が入り込む
。 お互いの体温で暖められた空気が逃げて、身震いするような温度差に武蔵は余計にヒル魔へ近付く。

「離れ、ろっ……」

聞こえなかったふりをして尚も体重をかけた。
元々武蔵は何かを腕に抱くのが好きだ。
そばにいる誰かを抱き締める質感、その重さと温度に気持ち良さを感じる質だ。
腕の中にいるのがヒル魔であれば尚更で。嫌がられる程に追いかけてやりたくなる気持ちは強まる。
布団がはがれるのも構わず、ふざけ半分に両腕を大きく動かして抵抗するヒル魔をシーツに押し付けた。

「このっっ……」

あがらう声に笑いが混じる。こういう遊びがヒル魔も嫌いでは無いという訳だ。
暖かな空気が流れてしまう事も構わず、狭い布団の中でもぞもぞと二人は位置を変えた。
追い掛けるぞ、というゼスチャーと、触るなという意思表示を見せつけながら、
けだるさと心地よさと温もりと眠気に浸る楽しいコミュニケーション。
その最中に、ふとヒル魔の目線が止まった。

闇に光るような白い腕が布団の中から持ち上がり、ばちりと派手な音を立てて武蔵の背中を叩く。

「な……ん、だ?」

月が差し込む薄闇の中、腕を振り上げたヒル魔のぽかんとした顔がこちらを見ている。
正確には、武蔵の肩。
首を伸ばして武蔵の肩裏を凝視している。

「……なんか、あったか」
「虫」
「……?」

武蔵自身がいくら後ろへ目線を伸ばしても叩かれた場所に目が届かない。

「虫、いたと思ったんだよ……。ほくろ、か」

なんだ、つまんねと言うようにヒル魔の頭がシーツに落ちた。

「お前のほくろ、なんでそんなぐしゃぐしゃした形してんだ」

言われてみれば、あったかもしれない。自分で見えない場所のほくろなど、気にした事も無かったけれど。

「なんで今さらそんな事言うんだ」

こんな関係になって何年にもなる。
お互いの裸なんてとうに見慣れたはずなのに、今さらヒル魔がホクロと虫を見間違える等らしくないと武蔵は思った。

「今さらって……」

そんな、何の意味もなく口に出した言葉にヒル魔の顔が赤く火照った。
薄闇の中でもはっきりと分かる顔色に武蔵は言葉の意味を考え、しばらくの間沈黙が流れた。
逃げようとする体を、逃がすまいと巻き付く武蔵の腕の中で、ヒル魔の片手が枕をつかんだ。
恥ずかしそうに赤らめる頬が目の前にある。
滅多に目にする事の出来ないそんなヒル魔を眺める武蔵の口端がぐにゃりとゆがんだ。

「そうか、お前……」

ああ、そうか。答えに気がつき武蔵が開いた大口に勢い良く枕が叩き付けられた。

「俺の背中、見っ…………」

「死ね!!」

武蔵の顔面めがけて何度も叩き付けられる枕に手加減は無い。
それでも、打ち込む強さがそのままヒル魔の照れなのだとわかって、武蔵は破顔した。

こんな関係になったからこそ。
ヒル魔は武蔵の背中を目にする事が少ないわけだ。
ホクロがどこにあるかなど、分からない程に。

布団の中で思いきり膝を立て、ずりずりと距離を置くヒル魔はどうやら本気で逃げる気らしい。
離れてしまった体に腕を伸ばす。壁に背があたったのか、後退を止めたヒル魔の足が武蔵の腹を強く押す。
顔に押し付けられた枕でその姿を目で追う事は出来ず、だから余計に手が宙をかいた。
窒息させるつもりか、と思う程の強さで押し付けられる枕。
武蔵の両手がヒル魔の腰をかすめるとその圧力がゆるんだ気がした。
腹に触れ、骨盤をなぞり、少し伸ばして腰へと指を届かせる。
ばふ、と枕の上から殴られるものの、その圧力がまた、ゆるむ。

「お前、自分のホクロ知ってるか」

わずかに空いた隙間からなんとか出した言葉は不明瞭なまま布に潜る。
ヒル魔には聞こえたのだろうか、なんのリアクションも返って来ない。
ただ、枕を叩く勢いも弱まった。

「ここ、とかよ……」

背中と腰が混じる場所。綺麗な曲線をつくるその箇所を指でなぞる。
枕が、強く押し返された。
自分よりもだいぶん薄い筋肉をなぞり、そこから片手を背の上へと回す。
骨の数を数えるようにゆっくりと指でヒル魔の肌を読んだ。
荒れてささくれた武蔵の指がヒル魔の滑らかな部分にうっすらと赤い線を残すのが目に浮ぶ。

「こっちにもあるんだぞ」

背から脇にかけて。
微妙な強弱をつけて刺激を加えれば枕が揺れた。
枕を押し付ける力が急に弱まって、楽になった武蔵の耳にヒル魔の小さなため息が届く。

「自分の背中、見た事ねえだろ」

あんなに熱かったヒル魔の体温は、どこを探しても見つからない。
自分ばかりが盛っている気がしてそうじゃないだろうと悪戯心が沸き上がった。
視界は枕に覆われている。分かるのはヒル魔の呼吸。触れる場所から伝わる温度。

なぞれば声が震えた。しつこくつつけば声が止まった。
丹念に刺激をくり返せば抱きかかえる体から力が抜ける。
顔に乗せられているだけの枕。
ヒル魔の片手は多分口に。
片手は、まだ枕を掴んでいるのだろうか。

「顔、見てえ」

声をかけても返事は無い。

「なあ、顔見せろよ」

反応を確かめながら撫で回し、その指が届く場所を徐々に広げる。
まだ湿り気を帯びている下肢をなぞると腕の中でヒル魔が背を反らした。
きゅ、と胸をいじれば腕に良い反応が返ってくる。

「……なあ」

しつこくくり返すとふいに顔が自由になった。
覆っていた布の塊が消え、その少し先にシーツに顔を押し当てるヒル魔の顎。
顔を押さえる指の間からこちらを睨む顔は見慣れたもの。

「ホクロの場所、教えてやろうか」

赤みを取り戻した表情を追い掛ける武蔵の視線からヒル魔は首をねじって顔を背ける。
シーツにすれただけではない耳の赤さがより際立つとも知らないままに。

「もう、いい……。黙れ、てめえは」

ため息に紛れた言葉が隠そうとしているのは照れ。
焦らすな、と意図する睨み付け。
武蔵をベットから蹴り落とす事は、壁際のヒル魔にとっては容易い事だ。
力をこめて、武蔵の腹を蹴りあげれば良い。

こんな時にでも逃げの手を緩める、拒絶をしないヒル魔の甘え。


キスしてえなと思った所でふと目があって。
すぐに反らされた視線がまたこちらに戻って、仕方ねぇと言うようなため息。
それは、肯定の合図。

のそのそと顔を寄せると、ヒル魔の指が武蔵の鼻をぎゅうとひねった。
ヒル魔の目元は隠れて見えない。けれど、唇が開いてゆっくりと近付いてくる。

再び腕の中に戻って来たヒル魔を抱き締めながらゆっくりと背中をなぞる。
しみも、傷も、ほくろさえも一つとして無い、真っ白な背中を。

それを知っているのは俺だけで良いと武蔵は思う。

腕の中の重さが少しずつ増して、おずおずともたれてくるヒル魔を強く抱き締めた。





空気さえもが冷える夜。
暖まった夜具に体を横たえて、心地よさに眠りにつこうとするごとに繰り返されるじゃれあいの数々。

二人の夜は、こうして更ける。





















これもたしか乗りと勢いで「かきます!」と言ってみて、言ってから
はたしてこんなんでええのか。ええのか……と頭を抱えた覚えが有ります。
リクやりますよ!とかお話を捧げるのは大好きなんですがすぐ言うのですが
その発言の重さに気が付くのは後の話で、うんうんとうなってみた覚えがあります。

人様と繋がりたい、お友達になりたい、仲良くしていただきたいという気持ちは
結構強いんですが無能で無鉄砲でだらしない所がまったく成熟しておりません。

シーヤさんには日々お世話になっておりますし、もっともっと御恩を
お返ししたいんですが中々こう……。北海道にお帰りの際はシーヤさんの
足下を磨くところからはじめたいです。
かっこ良く本を出され、ゲストもされて、イベントにも参加されて、
サイトもばしばし絵がたっぷりで御活躍のすべてがかっこいいです。惚れます。
今度御会いした時に手のひらとかやまだが「がっ!」てつかんだら
爪のあか欲しいなって合図なので気持ち悪がらず、
微笑んでつっこんでやって下さい。(ムリ)