【某 さんへ】 
* * 触手 * *




溶ける意識の片隅に、何かがひっかかって浮上する。
暗闇を探す視界を快楽に濁った意識が邪魔をした。何も映らない。何もわからない。

「ああっ……ぁんっ……やぁ…だ………」

咽をそらして喘ぎ、また何度目かの射精を感じた。
何度目という事自体が間違っているのかもしれない。
切れ間なく体を這い回るたくさんのものに追い立てられて、ずっと絶頂の中にいる感覚が引かない。
首を回して確認できる視界などたかがしれていて、重い頭を持ち上げて自分の体を見下ろす事さえ、おっくうだった。
身動きも出来ない。脱力と、高まりと、熱がまざった、酷く重い、重い身体。

先端に密着していた物が吐き出した物を吸引しはじめ、咽が何度も小さく鳴いた。そこに残った残滓を強制的に吸い上げられる快感は、痺れた意識を揺り覚ます。絶頂を突き抜けた、濃いだけの快楽が強弱がつけてヒル魔を攻める。

「んっ……ん、んぁっ…………」

逸らした背中の下で何かがずるずると動く気配がした。
感覚がなくなった両脚が持ち上げられ、腰が浮く。
肩だけが床についた格好は苦痛ではなかったが、それによって視界に入ってくる自分の惨状にヒル魔は呻いた。

それが何なのか。とうに考える事を放棄し、手放したはずの意識がにぶく動きだす。
ヒル魔の身体を這い回る、いくつものうごめく物。
太いものから細い物まで、それらは一瞬たりとも動きを止める気配を見せない。


たしか、まだ部屋は明るかった時に。
左腕の小さく盛り上がっていた傷からそれらが、痛みも無く生えてきて。

あれからどれだけ時間がたったのだろう?
どうしても感じる何かの視線から逃げられずにヒル魔はただ、涙を流した。


身体に巻き付いたそれらが、どういう仕組みなのかはわからない。
巻き付いているだけでなく、確実に皮膚の下にまで入り込む何かがある。
根のような細い細い触手が、皮膚の下の神経を直接撫で上げる。
腰にひろく貼り付いた布のような物の蠕動が肌を撫で、直接その奥を揉みあげる。肌の下。筋肉の奥。神経を直に触られるような刺激は錯覚とは思えない程に強く辛い。

「ひゃっ――――!!」

高く高く持ち上げられた下肢にまきついた物の1本がずるずると腹から胸へと流れ落ちて来た。移動した痕が体液でぬめり、空気が撫でるひやりとした温度に薄れかけていた意識がはっきりしてくる。

ち、と舌打ちが漏れた。

状況を把握などしたくもない。抵抗も逃げ出す事もできない今は。時間が過ぎるのを待つしか出来ない。
ただ、痺れたようにただようように、熱にうかされるような今、この時間に意識は邪魔でしかない。どうしようもない生理的な反応に身をまかせて、目を閉じたヒル魔の頬に移動してきただろう物が伸ばされた。ねっとりと粘液をからませたそれは、意志を持った動きでヒル魔の口元を執拗に濡らす。



こじあけられるのも面倒で、能動的に口を開けば妙に熱いそれは口の中に滑り込む。狭い口内に押し込んで来たそれは、舌を巻き込みながら縦横に動いた。
どんどん押し込められるそれに顎が限界まで開いて、息苦しさに呻けば体内が強く擦られる。

「ぐっ……、んんっ……」

それぞれが全く違った動きをしているようで、時にそれらは同じ物なのだと感じさせる時がある。同時に活発に動き、狂いそうな程強い刺激が全身に加わり、かすむ意識に呼吸さえ忘れてしまう。掠れた音が自分の咽から漏れているのかさえ分からない狂乱の時間はヒル魔が達するまで続けられ、いつもならばあり得ない程の強い射精を何度も強いた。

多分身体は疲労していて、限界を超えた動きと刺激にあちこちが麻痺していて、寝そべるだけの壊れた人形のような身体はそれでも絶えまなく快感に悶え続けて。

左手の中に収まった一本の物を握りしめると、ヒル魔自身に巻き付いている物が締め付けを増した。爪をたてれば、先端の近くにぴりりと痛みが走った。連動しているのか、感覚が直結しているのか。わからず、ただ欲しい刺激が足りない時にヒル魔は指をからめて動かした。達した、と思った時には手の中のそれもはじけて、ぬるついた液体が吐き出された。べとべととしたそれは次の刺激をより滑らかにするためだけに存在していて、手首までが濡れているだろう事にもう深く考える余裕はなかった。

「っ……、んっ………」

手の中に握った物が時折動き、擦り付けられた時。そこがまるで新しい性器になったように快感が襲ってくる。握る指が弛むと、不満だと言うように突然それは暴れはじめる。ヒル魔の握力が再び戻るまでそれは続き、あやすように動かせば今度はヒル魔が締め付けられた。

身体が、どこか、作り替えられている気がした。

口に押し込んできた物は、内側をこする動きから前後にゆれる動きへと変わって行った。
何度も大きく動くそれはヒル魔の尖った歯が気持ち良いのか強くそこへと体当たりをし、開ききった口の端からだ液と、ヒル魔の物では無い粘液が溢れ流れる。細い顎は押し込まれるままに広げられ、時には咽の奥までつき入れられた。それを、気持ち良いと感じてしまう事にヒル魔は目を瞑った。

「あぁっ……、んっ……、っ…、………っ!」

前兆も無く、ぶるりと震えた口内の物が液体をその中にまき散らした。ねばついたそれは何度も味合わされた物で、恐らくこれが奇妙な麻痺と催淫を促がす原因だろう。不快な味こそしなかったが、味わううちにそれは身体に渇わきを植え付ける。咽が乾くように、次が欲しくなる。


身体を、作り替えられている、そんな気がした。


嫌な体液に濡れた手のひらがムず痒さを訴える。握力の弱まったその部分に異形の形が押し付けられて、擦られる事に背筋が震えた。動きが止まれば物足りなさを感じた。握るだけの力もなく、手のひらを異物に押し付ければ焦れが治まり、代わりに新しい快感を感じさせた。
小さく揺らすだけしか出来ない手の平はじきにそれだけでは物足りなくなる。同調して下肢に伝わる刺激は十分すぎる程なのに、手のひらはもの足りなさを訴える。

「くっ、ッ……、ちく、しょ………っ……」
体内で動いていた太いものが、次第に動きを大きく変えはじめた。
手の中の物も、口に押し込んで来た物も、連動するように前後する揺れが強く変わった。
恥部の先端は痛い程に擦り上げられ、ひりひりとしたそれにさえヒル魔は蜜を滲ませた。
何もかもが直結して快感を高める。突き動かされる事に手が、咽が、そして腰の奥が溶けそうに熱い。
麻痺してしまわないのが不思議な程、全身の肌は施される繊毛と柔らかな吸着を感じて震える。

逃げられない感覚に背が反れ。そこに巻き付いた触手がその姿勢を固めて。
押し寄せる強い快の刺激に射精感が止まらない。

とうに限界を超えた回数の射精は、身体が悲鳴を上げても止まらない。
強制的とも言える程に促される射精は、先端を咥えこんだまま離れない突起が吸い上げる。
勢い良く散るはずだった体液は吸引され、尚もっとと言うよいうに二度、三度の射精を要求する。

「あっ…っ!ひっ……、もっ……やっ、んっ――ッ」

精を吐き出したばかりの敏感な部分をヒダにこすりあげられ、泣き声のような声が止まらない。
擦られれば全身が震える、異様な状況の中で押し込んで何度も揺すりあげた突起が、それぞれにヒル魔の中で、外で、びくびくと痙攣した。触れられるだけで辛いヒル魔の身体を突起が吐き出す液体が注がれた。
中に注がれる液体を受け止め切れず、口の端から、突き入れられた秘所の縁から。人間のものではない液体が漏れてこぼれる。

嫌な匂いが、更に意識を引きずり下ろす。
その感触がまた、餓えを促す。

止まらない快感の更に先が欲しいと思わされる身体に涙が溢れた。
満足が遠い。欲しいモノはまだまだ足りない。
乾きを訴えるようにホシイ、と思えば途端に意識が羞恥を訴える。

「いやっ……だっ…………」

助けて、と言いそうになってそれだけを飲み込んだのはどうしてだろう。
初めはそれを何度も繰り替えした。それは随分前の時間のコトだ。それとも全部夢だったんだろうか。
身体のあちこちで動きを止めないたくさんの異物たちは最初は一つだった。

その前は、自分どうだった?
この部屋にいたのは自分だけだった。
助けをもとめてもどうにもならない。助けを叫んでも、だから状況は変わらなかった。
そうじゃないのか。

たとえば誰かがいるとすれば。
こんな状況からはとっくに助けてもらえるはずで。

「やっ……ぃや…」

嫌な事を思い出しそうでヒル魔は自由にならない腰を揺らした。
終わりの見えないこの狂った時間は、何も考えないのが一番なはずだ。





はじまりは、ただ一つ。
面白いもんみつけたんだと、よく知った男の言葉。
笑った顔はいつもの物で。あまりにいつも通りでだから脳裏からいつまでも消えない。

いまもこの光景を楽しく見ているに違い無い、あの男。

ヒル魔は何も映らなくなった目を閉じた。それでも感じられるあの男の視線から逃げるように声を上げた。
口に押し入っている突起が音の振動に深く潜り込んでくる。
限界まで引き延ばされた両足の感覚はもう無く、視界を閉じた分余計に強く感じられる刺激に意識を散らした。







ここにはひとりで。
誰かがいる訳も無く。
ただ、それだけで。

それ以外を考える事を、ヒル魔は止めた。
嫌な事を忘れるためだけに、身体を揺らして行為に没頭した。

いつかは終わるだろう、その時ばかりを考えて。
高まる熱に意識を流して、止まらない涙の理由を忘れた。






















これは某さんへの差し上げものなんですが、その方に
触手のっけてもいいかいって聞いたら(未公開なので)
「どれ?」って聞かれました。何そんなに書いてるんですか。
そんなに触手が好きですか。


好きだ!



ちなみに某お話とラストが全く同じなのはネタです。(図々しい)
つうか好きなんです。武蔵が見てるだけってお話。
武蔵がつっこまない話も好きです。(さらりと駄目発言)

あとてめえ触手祭りどうなったんだよ!