【2006/1/11企画】 06/01/14 (Sat) 15:57:29 
* * チンカップヒル魔&スポーツ店スタッフ武蔵 * *


スポーツ用品店のバイトというのは、始めてみると面倒なもんだった。
商品の種類は多く、物はかさばり、客の要求はそれぞれ違う。

平日はこうして暇な時間がとても多い。客が1人も来ないような時間を半ばいねむりするように過ごしていると、今日もあのガキがやってきた。

学校をどうやって抜け出したのか、午後の早い時間だというのにしれっとした態度でここを訪れる。
タッチフットが好きだというその子供は、中学校に入ったらアメフトをするのだと聞きもしない事を語りながら武蔵相手に時間をつぶす。ヒル魔と名乗る少年は、今日も人気のない店内をうろつきながら武蔵へ話しかけてくる。小賢しそうな物言いをする子供は、同じ年の集団の中ではうまくやれないのだろう物を感じさせる。

こういう、子供よりも大人に懐くガキっているよな。

馴れ馴れしくされながらも不思議と嫌な気持ちがしないまま武蔵は子供につきあった。
言葉と虚勢とはったりを重ねて、年よりも自分を大きく見せようとする子供らしい生意気さ。

今日は防具が欲しいのだという。
フットタッチの新しいチームで態度の悪いヤツがいるとかで。
股間を守る物が欲しい、と商品を選ぶ横顔は真剣なもの。

「お前にあうような小さいもん、あるか?」
「小さいとか言うんじゃねえ」

ファウルカップの在庫の中から子供用のサイズを探してみる。
成長と体格に合わせて紐を結ぶ仕様のそれは、やはりヒル魔にとっては少し大きい。
標準より随分と細い腰回りには、紐の長さや金具の位置の調整が必要だろう。

「そこの鏡の前でこれ、あててみろ」

言われるままにズボンの上からヒル魔はブラスチック素材のカップを股間にあてた。
布の上から違和感のないちょうど良い場所を選ぶ仕種がどこか可笑しく武蔵は笑った。

「何、笑ってんだよ」

布の上からおしつけるそれは、明らかにヒル魔の股間にあうサイズではない。
走る時、動く時に両足の付け根がこすれるだろう事は明らかだった。

「まだお前には早いんじゃねえか?」
「うるせえな、もっと合うやつねえのかよ」

もぞもぞと太ももにあたらない場所を探しているヒル魔の両手が、鏡の前で小さく動く。
そのプラスチックが押さえる下に、どれほど立派なものがあるのかと、からかいたくなる気持ちを押さえる。

「上に持ち上げないと、股がすれるなあ…」

ヒル魔の後ろで武蔵は強く紐を引いた。
小さな手が押さえるカップの位置を、さらに紐で位置を上げる。

「痛くねえか……?」

無言でこくりとうなずく頭。鏡越しに見上げると少し赤い頬。
一人前に、恥ずかしいんだろうか。
腰の位置を金具で強く固定してから、股の間の紐をつなぐ。
小さな体がひくりと揺れた。

「きついか?」
「べ、つに……」

股の間、割れた肉の間に密着させたベルトに少し力をこめて引き上げる。
服に押し当てられるプラスチックの形に合わせて布の皺が形を変える。

「手、離していいぞ」

あまり圧迫して血流が止まる。理想なのは指一本が入る程度の適当な余裕。
武蔵は何も考える事なくカップの縁に指を差し込んだ。
動揺するヒル魔がびくりと体を緊張させた。
しめつけの具合を確かめる、それだけのつもりだった武蔵はその敏感な反応を楽しんだ。

「んーー、こんなとこか」

指の先が、柔らかな部分につきあたる。
小さく動かすと逃げるようにヒル魔が腰ごと体をそらす。
ヒル魔の身体に触れている武蔵の指は、そんな逃げには影響されない。
届くか届かないかの距離のところで指を振れば、くすぐったそうに顔が歪んだ。

「何やってんだ、セクハラ爺」

睨む頬が赤く可愛い。

「いずいとか、痛いとかないか?」
「てめえの指が、気持ち悪りぃ!」

大人しく指を抜き、細いベルトに印をつけた。

「こことここ、切って金具ずらすからちょっと待ってろ」

何か言おうと考えているらしい表情が武蔵を睨みつけている。

「触った、だろ。変態爺」
「何に?」
「……………ロリコン、爺」

最後の言葉は聞こえないふりをしておいた。
ガキの癖に言葉の使い方だけは立派なもんだ。
目検討で長さを整え、もう一度つけてみろとそれを渡すとヒル魔はしぶしぶ受け取った。

もたもたと手まどいながらも武蔵の指導の元、ヒル魔は装着方法を覚える。
何度もぴたりと来る位置を確かめ、最後に鏡の中の自分の姿を満足そうに見下ろしている。

「擦れたり、赤くなったりしたらすぐ言えよ。薬塗ってやる」
「……ほんとに変態臭いな、あんた」
「お前みたいなガキに、興味があるわけねえだろ……」

口ばかりが達者な子供は、お前みたいのが実はむっつりなんだとしたり顔で決めつけて来る。
子供なんかに興味は無い。
しかし、ヒル魔の中でどうやらそれは事実と決定付けられたらしい。

「大変だよなあ。ホモのロリコンて。…………ばれたら、ここもクビになんだろ?」

知った風な口をききつつ、ヒル魔は何やら小さな手帖を取り出しした。

「俺の言う事、聞いてくれんなら黙ってやってても構わねエんだぜ?」

そういう、新手の遊びなんだろうか。
否定するのも面倒臭くて、武蔵は適当な返事であいずちを打った。
黙っててやるからただにしろ、との要求は突っぱねて値段を口にする。
定価よりは、多少割り引いた数字ではある。

手帖に書き込まれた文字をそっと上から覗くと、汚い文字で武蔵の名前が書き込まれていた。
いつのまに下の名前を調べたのか、画数の多いそれが書かれた下には「ホモのロリコン」と書き加えられる。

「ばれたくなけりゃ、俺の言う事きくんだな!」

金を受け取り、武蔵はため息をつく。
少しでも相手より先手を打ちたい子供特有の張り合いが見つけだした遊びの一種なんだろうか。
精一杯の背伸びと虚勢がそんな形で満足するなら、付き合ってやっても構わない。

どうせここは、暇なバイトだ。

「何、させたいんだよ」
「週末、チームの練習に顔かせよ!昔アメフトの選手だったんだろ!」
「…………。面倒くせえな」
「バイト、くびになってもいいのか?」

万能の鍵を手に入れたと信じる子供の顔はやけに嬉しそうにこちらを見上げる。
「日曜、何時だ」
「1時。それと、チームのヤツラにも同じの、配るからな。14人分、揃えておけよ!」

そこまで面倒見る気はねえよと文句を口に出しかけたとき。
ヒル魔は店から駆け出していた。
小柄な身体に背負われたランドセルが鳴らす音が奥へと遠ざかる。

14個って、間に合うのかよ……。
仕入れの台帳をばらばらとめくりながら武蔵はため息をついた。
下らない遊びに付き合っちまった。


簡単にうち消せる不名誉な疑惑をなかった事にしなかったのは。
何だかんだで自分があいつを気に入っているからだろう。
突然つきつけられた面倒を考えると面倒だなあとも思いつつ。

それだけじゃあない楽しさに武蔵は静かに笑みを浮かべた。
暇なだけのこのバイトが。ほんの少し、楽しくなった。

















この話で「いずい」という発言をして方言だと知りました。
このころは稲葉さんをチンカップというグッズで虐めるのはやってました。
これもたしか、チャットの最中に出てきたネタだったなあ‥‥。